加齢と感情とテストステロン
加齢とともに、なぜ”キレるオジサン”は増えるのでしょうか?中高年男性が加齢とともに感情のコントロールに関する問題に直面することは一般的に知られています。年齢の増加に伴い、感情のコントロールに影響を与える要因がいくつか存在します。
目次
- なぜ”キレる”のか?
- 社会的問題点/個人的問題点
- 対処法とアプローチ
- テストステロン環境を整えることで快適に!
- 流行りもの考察|NMN
なぜ”キレる”のか?
加齢に伴い、感情のコントロールに変化が生じる理由
①前頭前野の変化: 加齢に伴い、前頭前野と呼ばれる脳の領域の機能が変化することがあります。前頭前野は感情の調整や判断力に関与しており、その機能低下が感情のコントロールに影響を与えます。これにより、イライラや怒りが増加することがあります。
②ホルモンの変化: テストステロンという男性ホルモンは加齢とともに徐々に減少します。一部の男性は低テストステロンの影響を受け、気分が不安定になることがあります。身体的、精神的、性的に問題がおこり、「男性更年期障害」(LOH症候群)といった病気になることがあります。
③ストレスの蓄積: 中高年になると、仕事、家庭、健康などのストレスが蓄積しやすくなります。このストレスは感情のコントロールに影響を与え、イライラや焦燥感を引き起こすことがあります。
④対人関係の変化: 家庭構成や社会的状況が変化することがあり、これは感情の安定性に影響を与えることがあります。孤独感や対人関係の問題が感情の変動に寄与することもあります。
⑤健康問題: 健康問題や慢性疾患が中高年に増加することがあり、これらの問題は感情にも影響を及ぼすことがあります。身体的な不快感や疼痛が感情の安定性に影響を与えることがあります。
社会的問題点/個人的問題点
実際には”キレる”ことで、どのようなことが問題視されているのでしょうか?
中高年男性における加齢と感情のコントロールについて社会的な問題と個人的な問題が存在します。以下に、厚生労働省などが指摘するそれぞれの側面を示します。
社会的問題点
①家庭内暴力や対人関係の悪化
②社会的孤立
③雇用機会の減少
個人的問題点
①感情の不安定さ: 穏やかな日常生活が困難になる。
②自己認識の変化: 仕事や家庭、社会との調和が困難になる。
③生活の質の低下:楽しみや幸福感が減少する。
以上の問題は個人差が大きく、すべての中高年男性に当てはまるわけではありません。しかし、これらの問題に対処するためには、適切なサポート、健康管理、心理的なケアが必要と言われています。
対処法とアプローチ
中高年男性がこれらの問題に対処するためには、
一般的には以下のようなアプローチが役立つとされています。
①健康の維持: 健康的な生活習慣、適切な運動、バランスの取れた食事。
②ストレス管理: ストレスを軽減する方法を見つける。
③コミュニケーション: 対人関係を強化することが感情の安定性に役立つ。
④専門家のサポート: 必要であれば、男性更年期専門外来の受診、心理療法やカウンセリングを受ける。
以上が、厚労省や自治体などで勧められていることです。
テストステロン環境を整えることで快適に!
もう少し詳しくテストステロン治療療法認定医として、
「テストステロンに着目することでかなり過ごしやすくなる」点について解説します
◇生活の中でできること
①健康的な食事: バランスの取れた食事。特に亜鉛やビタミンDがテストステロンの生産に関与しているため、これらの栄養素を摂取しましょう。シーフード、ナッツ、種子、緑黄色野菜などが良い選択肢です。
②適度な運動: 運動はテストステロンの生産に寄与します。特に抵抗運動や筋力トレーニングが効果的です。(過度の運動は逆効果になることもあるため、適切な量と強度で行いましょう)
③十分な睡眠: 睡眠不足はテストステロン濃度を低下させます。特に6時間以下の睡眠時間ではテストステロンは大きく減少します。質の高い睡眠を確保し、規則的な睡眠サイクルを維持しましょう。
④ストレス管理: 長期間の慢性ストレスはテストステロンを減少させることがあります。ストレス軽減のためにリラクゼーション法や瞑想を試してみることが大切です。(瞑想の効果は論文などで報告されています)
⑤アルコールと喫煙の制限: 過度なアルコール摂取と喫煙はテストステロンに対して悪影響を及ぼす可能性があるため、控えるか適切に制限しましょう。
◇ 医学的な治療
①テストステロン補充療法(TRT): 低テストステロンが感情や健康に悪影響を及ぼす場合、医師の指導のもとでテストステロン補充療法が考慮されます。これはテストステロンを注射やゲル、パッチなどを使用して補充する治療法です。
②漢方薬:補中益気湯、八味地黄丸など医療用漢方薬では有効性が報告されています。
快適に乗り切りましょう。
追記:特に50歳代は男女ともに、配偶者が更年期障害、親の介護、子供の就職・進学、本人の仕事の問題など、どこを見ても多くのストレスにさらされる時期で、感情のコントロールが難しい時期ともいわれています。要注意です!
50歳からの男性のマインドセット
流行りもの考察|NMN
近年、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が注目されており、中高年男性の健康を支える鍵として期待されています。
ハーバード大学医学大学院遺伝学教授
長寿研究の第一人者:デビッド・A・シンクレア
LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界
「NMNが細胞のエネルギー供給を向上させ、細胞の健康を改善することで、寿命を延ばす可能性がある」
人間においても直接的に寿命が長くなることは確認できたわけではありませんが、身体に良い事が次から次に報告されており、”抗加齢医療”において注目されているようです。
いくつか文献より効果を拾ってみました。
①運動トレーニング中の人間の有酸素能力を高めます
②高齢者の身体能力の低下を防ぎ、倦怠感を改善する
③人間の老化に関連する筋肉機能障害を予防する
⑤NMNの補給は、動脈硬化を緩和する
⑥全身のエネルギー消費を増加させることで体重減少に寄与している
<出典>
1)Effect of oral administration of nicotinamide mononucleotide on clinical parameters and nicotinamide metabolite levels in healthy Japanese menJunichiro Irie, Emi Inagaki, Masataka Fujita, Hideaki Nakaya, Masanori Mitsuishi, Shintaro Yamaguchi, Kazuya Yamashita, Shuhei Shigaki, Takashi Ono, Hideo Yukioka, Hideyuki Okano, Yo-ichi Nabeshima, Shin-ichiro Imai, Masato Yasui, Kazuo Tsubota, Hiroshi Itoh
2)Nicotinamide mononucleotide supplementation enhances aerobic capacity in amateur runners: a randomized, double-blind study,J Int Soc Sports Nutr. 2021 Jul 8;18(1):54.
3)Effect of 12-Week Intake of Nicotinamide Mononucleotide on Sleep Quality, Fatigue, and Physical Performance in Older Japanese Adults: A Randomized, Double-Blind Placebo-Controlled Study,Nutrients. 2022 11;14(4):755.